儀鍼灸院のとがわです。
不安感がある状態とは
不安を感じることは、誰にでもある自然な反応です。
しかし、はっきりした理由がないのに不安になる、先のことが気になって仕方がない、何か悪いことが起こりそうな気がするなど、不安感が続くことがあります。
患者さんでは、
- 何となく不安になる
- 将来のことが気になって落ち着かない
- 些細なことが心配になる
- 動悸や息苦しさを感じる
- 夜になると不安が強くなる
- 眠ろうとしても考えごとが止まらない
- 人前に出ると緊張する
- 疲れているのに気持ちが休まらない
などの訴えがあります。
不安感は、単に気持ちの持ち方だけで説明できるものではありません。身体の緊張や睡眠不足、疲労などが重なり、心身ともに休まりにくくなっている場合があります。
① 自律神経と不安感
不安を感じると、身体は危険に備えようとします。
ストレスや心配ごと
↓
脳が危険や負担を認識
↓
交感神経を中心としたストレス反応が働く
↓
心拍数や筋肉の緊張が高まる
↓
身体が休まりにくくなる
このような反応は、危険から身を守るために必要なものです。
しかし、緊張状態が長く続くと、次のような症状が現れることがあります。
- 心臓がドキドキする
- 呼吸が浅くなる
- 胸が詰まるように感じる
- 身体に力が入る
- 些細なことが気になる
- 落ち着かず、何度も確認したくなる
身体の変化を感じることで、さらに不安が強くなることもあります。
不安と身体の緊張が互いに影響し合い、休もうとしても休めない状態になることがあるのです。
② 睡眠不足と疲労
睡眠不足や疲労も、不安感に関係します。
十分に休めない
↓
身体や脳の疲労が蓄積する
↓
気持ちを切り替えにくくなる
↓
心配ごとが頭から離れにくくなる
このような状態では、普段なら気にならないことまで心配になったり、物事を悪い方向に考えたりすることがあります。
また、不安があるために眠れず、眠れないためにさらに不安が強くなるという悪循環も起こります。
「気持ちを強く持とう」とするだけでは、なかなか改善しない場合もあります。
身体の状態や睡眠、疲労なども含めて考えることが大切です。
東洋医学的な見方
東洋医学では、不安感を精神面だけの問題として捉えるのではなく、心身の状態を合わせて考えます。
特に、心・肝・脾・腎の働きや、気血の状態に注目します。
同じ不安感でも、身体の状態によって東洋医学的な捉え方は異なります。
① 心気虚・心血虚(気血が不足しているタイプ)
心は、東洋医学では精神活動や意識の安定に関係する臓と考えます。
心の気や血が不足すると、精神を安定させる働きが弱まり、不安感や動悸、不眠などが現れると考えられています。
特徴
- 些細なことが気になる
- 動悸がする
- 眠りが浅い
- 疲れやすい
- 集中力が続かない
- 顔色が青白い、あるいは血色が乏しい
東洋医学的な考え方
気血の不足
↓
心神を十分に養いにくくなる
↓
精神が安定しにくくなる
関連穴の例:
- 神門
- 内関
- 足三里
- 三陰交
気血の不足が中心なのか、ほかの臓腑の状態が関係しているのかを見極めます。
② 肝気鬱結(気の巡りが滞っているタイプ)
肝には、気の巡りを調節する「疏泄(そせつ)」という働きがあると考えられています。
ストレスなどによってこの働きが乱れると、気の巡りが滞り、気分の変動や不安感につながることがあります。
特徴
- 心配ごとが頭から離れない
- ため息が多い
- 胸や脇が張る
- 喉に何か詰まったように感じる
- 気分に波がある
- イライラと不安が交互に現れる
東洋医学的な考え方
肝の疏泄が乱れる
↓
気の巡りが滞る
↓
気分の切り替えが難しくなる
関連穴の例:
- 太衝
- 合谷
- 内関
気の巡りを整えることを中心に考えます。
③ 心腎不交・陰虚火旺(休まらず、熱がこもるタイプ)
東洋医学では、心と腎は互いに関係し、身体の陰陽のバランスを保つと考えます。
陰が不足して陽を十分に抑えられない状態では、熱が上に現れたり、精神が落ち着きにくくなったりすることがあります。
特徴
- 不安感が強く、眠れない
- 顔や手足がほてる
- 口が渇く
- 寝汗をかく
- 気持ちが高ぶって休まらない
東洋医学的な考え方
陰の不足
↓
陰陽のバランスが乱れる
↓
心神が落ち着きにくくなる
関連穴の例:
- 太渓
- 照海
- 神門
- 三陰交
ただし、ほてりや不眠があっても、必ず陰虚火旺に当てはまるわけではありません。ほかの症状や脈・舌などを合わせて判断します。
④ 腎気虚(不安や恐れが強いタイプ)
東洋医学では、腎は生命活動の根本を支え、恐れの感情とも関係すると考えられています。
腎の気が不足すると、精神的な支えが弱くなり、恐れや不安を感じやすくなる場合があると考えます。
特徴
- 先のことが心配になる
- 些細なことでも怖く感じる
- 疲れやすい
- 腰や膝がだるい
- 足腰に力が入りにくい
- 頻尿などの症状を伴うことがある
東洋医学的な考え方
腎気の不足
↓
身体を支える力が弱まる
↓
恐れや不安が現れやすくなる
関連穴の例:
- 太渓
- 照海
- 腎兪
- 三陰交
腎気の不足だけでなく、心や脾との関係も考えます。
⑤ 陰陽から考える不安感
両儀鍼灸院では、東洋医学の基本となる陰陽の考え方を重視しています。
陰陽は、単に身体を二つに分ける考え方ではありません。互いに関係しながら、全体のバランスを保つものとして捉えます。
身体には活動する働きと休息する働きがあります。
活動する
↓
休息する
↓
回復する
↓
再び活動する
このような移り変わりが、身体の状態を保つうえで大切です。
しかし、緊張や心配ごとが続くと、活動する方向に傾き、休息へ切り替わりにくくなることがあります。
東洋医学的には、このような状態を陰陽の偏りという視点から考えることができます。
ただし、不安感があるからといって、すべてを「陽が強い」「陰が不足している」と判断するわけではありません。
気血の不足が中心なのか、気の巡りが滞っているのか、熱がこもっているのかなど、身体全体を診て考えることが重要です。
⑥ 両儀鍼灸院では
両儀鍼灸院では、不安感という症状だけで施術を決めることはしません。
いつ不安になるのか、睡眠は取れているのか、食欲や便通はどうか、疲れや冷えはあるのかなど、患者さんのお話をうかがいます。
そのうえで、脈や身体の状態を確認し、東洋医学的にどのような偏りがあるのかを考えます。
同じ不安感でも、気血が不足している場合と、気の巡りが滞っている場合では、身体の状態が異なるからです。
身体全体の状態を確認しながら、気血の調節と邪の除去を主眼に施術を進めていきます。
不安感を抱えているときには、「気持ちの問題だから」と一人で抱え込まず、ご自身の身体の状態にも目を向けてみてください。
不安感が長く続く場合や、日常生活に支障が出ている場合は、医療機関への相談も大切です。強い動悸や息苦しさなどがあるときも、鍼灸だけで対処しようとせず、必要な医療を受けてください。
両儀鍼灸院では、患者さんのお話をうかがいながら、ご自身の身体について理解を深め、これからどうなっていきたいのかを一緒に考えていきます。
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